7月4日の記事でも触れましたが、私はバイオソリッドエナジー社の主任研究員も兼任しています。
今日は、「バイオソリッドエナジー社って何をする会社なの?」ということについて詳しくご説明したいと思います。
私たちが、トイレで用を足したり、台所でのお料理やお洗濯などをした後の排水は、基本的には下水道を通って下水処理場に送られます。下水処理場では、こうした汚水を衛生的に処理して、きれいで安全な水にして川や海に戻しています。
「ではどうやって汚い水をきれいにするの?」という疑問を解くカギは微生物の働きにあります。下水処理場にあるタンク(エアレーションタンクといいます)にいる微生物が下水中の汚れ(有機物)を食べて増殖します。こうして増えた微生物に他の汚れなどがついて、タンク内に沈殿します。微生物が沈殿したタンク内のきれいな上澄みを塩素消毒して、川や海に放流しているのです。
ところで、「沈殿した微生物はどうなるの?」と疑問をもたれた方も多いと思います。沈殿した微生物の一部は、水をきれいにする過程に再び戻されますが、多くは余剰分として、下水処理場の外に出さなければなりません。
バイオソリッドエナジー社は、こうして出される余分な微生物の塊(脱水汚泥)を造粒したのち、木チップを主燃料としたボイラーによって得られた熱風で乾燥させることでペレット状の固形燃料を生成して、カーボンニュートラルな燃料として販売する会社です。
こうして作られた固形燃料を石炭ボイラーや専用ボイラーなどで用いることによって、温室効果ガスの発生抑制に貢献できると考えています。
NEDO委託事業
バイオソリッドエナジー社が運営する固形燃料製造プラントは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)による委託事業の一環で整備されたものです。
委託事業の名称は、「造粒乾燥法による脱水汚泥燃料化システムを活用した熱利用フィールドテスト事業」といいます。NEDOとの委託事業の目的は、ズバリ、「バイオマスの熱利用にかかわる施設を実際に設置して、そのエネルギー利用を最大限に行った場合の長期的な運用データを収集・分析して、今後の本格的な導入促進の呼び水」にすることにあります。ちょうど今日から洞爺湖サミットが開催されますが、そこでの主要テーマのひとつは「地球温暖化対策」。バイオマスの利活用は地球温暖化対策の1つの有効な手段と位置づけられていますから、非常に時宜にかなった事業ではないかとスタッフ一同自負しています。
NEDO委託事業の背景と目的
冒頭で述べたように、全国各地に整備されている下水処理場では、余剰分として出された微生物の塊(脱水汚泥)をどのように取り扱うかが大きな課題となっています。
これまで多くの自治体が脱水汚泥の処分に頭を悩ませてきました。脱水汚泥の処分義務を負う自治体が直面しているニーズは大きく分けて3つ。「脱水汚泥の長期安定的な処分方法を確保すること」、「脱水汚泥処理に関わる行政コストを最小化すること」、そして「脱水汚泥処理に関わる環境負荷を削減すること」です。
こうした背景のもとで、脱水汚泥は、「産業廃棄物として海洋投棄(現在は禁止)、陸上埋立、焼却などの方法で最終処分」、あるいは「肥料(コンポスト)、セメント原料、炭化燃料といった形で有効利用」されてきました。
いまあげた方法に課題がないわけではありません。
最終処分に関しては、陸上埋立処分場の残余年数が非常に短いということに加え、汚泥焼却炉の新設・設備更新コストおよびランニングコストが自治体の財政事情の観点から多大な負担となっていることから、その継続性に大きな課題が生じています。
一方、有効利用に関しても、最終生成物の販路の確保(コンポスト・炭化設備)、コスト(炭化設備)・処理施設が偏在している(セメント工場)などといった大きな課題を抱えており、いずれもその普及拡大にはいたっていません。
そうしたことを踏まえたうえで、本NEDO委託事業は、これまで述べてきた脱水汚泥をめぐる現状と課題に対するソリューションの1つとして、脱水汚泥を、木チップを主燃料として造粒乾燥させてペレット状の固形燃料を生成し、それを製紙工場の石炭ボイラーの補助燃料として利用することを通じて、脱水汚泥の効率的な有効利用を促進させるための実証データの収集、課題の整理およびそれらの解決方法の提示を目的としています。
NEDO委託事業が期待する効果
本NEDO委託事業が期待する効果は以下の通りです。
脱水汚泥を拠出する自治体に対して
@ 安定的な処分先の確保
A 長期的な視点での行政コストの削減
B 環境負荷の低減
固形燃料利用先に対して
@ 企業の社会的責任(CSR)を果たすこと
A 環境負荷の低減
地域住民に対して
@ 温室効果ガスの削減
A 貴重な資源である陸上埋立処分場の延命
B 雇用の拡大
全国の自治体に対して
@ 汚泥処理に関する選択肢の提供
NEDO委託事業の具体的内容
■ 脱水汚泥の収集に関して
地方都市において脱水汚泥処理プラントを導入する場合には、スケールメリット追求の観点から広域処理が前提となりますが、含水率が大きい脱水汚泥の運搬コストは無視できません。そこで、本NEDO委託事業では、山形県新庄最上地域およびその近接地域から発生する脱水汚泥を対象に、広域処理に伴うスケールメリットと運搬コストの最適な組み合わせについて実証を行ない、最適なバイオマス収集運搬システムの有効性を検証します。脱水汚泥の年間収集量は9,000トン以上を予定しています。
■ 脱水汚泥の燃料化に関して
脱水汚泥燃料化装置として、処理能力30t/日の造粒乾燥設備(発注先:新日鉄エンジニアリング株式会社)を使用します。この装置から生成される燃料は、3〜4mmのペレット状でハンドリング性が良く、含水率も8%程度と低いために、臭気が比較的低く抑えられ、長期保存時においても、発酵等の変質や自然発火の心配はありません。また、脱水汚泥が本来有するカロリーを損なうことなく燃料化されているため、4,000kcal/kg前後と石炭の約2/3程度の熱量を有します。さらに、本装置の基本仕様において想定している主燃料はA重油ですが、本事業においては、主燃料として木チップを用いるものに改変し、燃料製造に関わる温室効果ガスの削減量および燃料生成コストの削減効果についての実証を行ないます。前述のように、本設備において燃料化する脱水汚泥は日量30トンで、年間では9,000トン以上を予定しています。また、燃料生成に必要な熱風発生炉の燃料として消費する木チップは日量7.5トンで、年間トータルで2,250トン程度を予定しています。
■ 固形燃料の石炭ボイラーでの利用に関して
製紙工場に設置されている石炭専焼ボイラーにおいて、燃料の一部として脱水汚泥由来の固形燃料(バイオマス系燃料=カーボンニュートラル)を使用し、化石燃料である石炭の削減効果およびそれに伴う温室効果ガスの削減効果についての実証を行ないます。石炭ボイラーに投入する脱水汚泥燃料は、日量平均で6.51トン、年間では2,000トン弱を予定しています。
■ 本委託事業が期待する温室効果ガス削減に関して
固形燃料生成時に消費する電力等から算出された温室効果ガスの発生量は、脱水汚泥1トンあたり約70kg-CO2と見込まれます。一方、脱水汚泥1トンから生成される燃料は石炭換算量で150kgに相当し、これを全量石炭代替として用いた場合、化石燃料由来の温室効果ガスをおよそ360kg-CO2分だけ削減できる計画です。したがって、本事業が期待する温室効果ガス削減効果は、脱水汚泥処理1トンあたりおよそ290kg-CO2となります。
地球温暖化防止の一助となるべく
バイオソリッドエナジー社での活動を通じて、地球温暖化防止の一助となるべく頑張っていきたいと思います。
今後も、積極的にこのブログやその他の媒体を通じて、バイオマスを利用した地球温暖化防止活動に関する情報を発信していきたいと思います。と同時に、皆さんからのご意見やアドバイスもお聞かせいただくと幸甚です。
よろしくお願いします。
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